ウェディングケーキとは、結婚式や披露宴で新郎新婦が切り分けてゲストに振る舞うケーキのことです。現代では生ケーキやシュガーケーキなど様々な種類がありますが、その起源や由来は古代からさかのぼることができます。ウェディングケーキには、新郎新婦の幸せや繁栄、子孫繁栄などを願う意味が込められており、多くの国や地域で伝統的に食べられてきました。この記事では、ウェディングケーキの歴史を時代や地域ごとに紹介していきます。
古代ギリシア・ローマ時代
ウェディングケーキの原型となるものは、古代ギリシアやローマにまで遡ることができます。当時は、小麦粉や塩、水などで作ったビスケットやパンのようなものが結婚式で使われていました。これらのものは、小麦が繁栄の象徴と考えられていたため、新郎新婦の幸運や豊かさ、子宝に恵まれるようにという願いを込めて食べられていました。
古代ローマでは、新郎がこのビスケットやパンの一部を食べ、残りを花嫁の頭にかけるという儀式が行われていました。これは、新郎新婦が正式に結婚した証として、祝福された夫婦から生まれた子どもが高位の職業に就くことができるようにという意味があったと言われています。また、ビスケットやパンの欠片には幸福が宿ると考えられ、儀式の後にはゲストが競い合って奪っていったそうです。
中世ヨーロッパ時代
中世のヨーロッパでは、結婚式に特別な焼き菓子を食べる風習が広まりました。当時は、卵やバター、砂糖などを使って、スコーンやパン、パウンドケーキのようなものを作っていました。これらのものには、子孫繁栄や豊穣を意味するナッツやレーズン、洋酒などが加えられることもありました。甘いケーキは当時は貴重で高価なものであり、新郎新婦の豊かさや幸せを祈るものであり、幸福のシンボルであるとも考えられていました。
イギリスでは、中世からケーキを高く積み上げるという風習がありました。これは、積み上げられたケーキの山の頂点越しに、新郎新婦がキスできれば幸せになれるというジンクスがあったからです。ケーキの山は高ければ高いほど幸せが大きいと考えられていたので、結婚式の招待客がビスケットやフルーツケーキなどのお菓子を持ち寄って積み上げていたそうです。現在ウェディングケーキの上に新郎新婦の人形が載っているのは、この風習の名残という見解もあります。
近代イギリス時代
近代のイギリスでは、18世紀にフランス人シェフが考案したシュガーケーキがウェディングケーキとして流行しました。シュガーケーキとは、ナッツやレーズン、洋酒を使い、しっかりと固く焼き上げた土台を、砂糖や卵白で作ったアイシングでコーティングしたケーキのことです。アイシングはレースのような装飾や花などを描くことができ、華やかに飾られたシュガーケーキは、結婚式にふさわしい豪華なケーキとして人気を集めました。
ウェディングケーキが多段になったのは、19世紀になってからです。1840年にヴィクトリア女王とアルバート王子の結婚式で、フルーツケーキにアイシングでレースや花を描いた三段のウェディングケーキが登場しました。このケーキは当時の新聞にも大々的に報じられ、大評判となりました。一番下の段は披露宴に来てくれたゲストの方に、真ん中の段は当日欠席した人に、上段はこれから生まれてくる子供のためにという意味で三段だったと言われています。このケーキは現代のウェディングケーキの基礎となりました。
現代日本時代
日本でウェディングケーキが登場するようになったのは、戦後のことです。洋菓子の文化が広まるにつれて、結婚式にも取り入れられるようになりました。当初はケーキに入刀することはほとんどなく、大部分がイミテーションケーキでした。しかし、次第に生ケーキやシュガーケーキなど様々な種類が作られるようになり、新郎新婦がファーストバイトでお互いに食べさせたり、デザートとしてゲストにふるまったりするようになりました。
現代では、ウェディングケーキは新郎新婦の好みや結婚式のテーマに合わせて、色や形、デザイン、味などを自由に選ぶことができます。また、ケーキ以外にも、チョコレートやマカロン、ドーナツなどのスイーツを使ってウェディングケーキを作ることもあります。ウェディングケーキは、新郎新婦の個性や幸せを表現するものとして、結婚式の見せ場の一つとなっています。